Behind the Scene:DOME|3年以上模索し続けた、ウォールナットのデスク

2024-12-16FEATURED PRODUCTS

ダークトーンのインテリアに合わせた『METRO』『METRO DARK』。
ライトトーンのインテリアに合わせた『POLAR』『STUDIO』。
木家具とのマッチングを意識した『FOREST』『GROVE』。

PREDUCTS DESKは、さまざまなインテリアやワークスペースにマッチするよう、ラインナップを拡充してきました。これまでの6種類は、検討される方が迷うことがないよう、棲み分けも意識しながら展開してきています。

その最後のモデル『STUDIO』が2023年の12月にリリース。これをもって、デスクとしてはやっと一通り揃ったといえる状況になりました。

……ただ、私たちはこの6モデルの開発・リリースと並行し、「発売できるかわからない」けれど「どうしても作りたい」と考え、あるデスクの試作を重ねていました。

それが24年11月にリリースしたウォールナットのデスク『DOME』です。

DESK - DOMEとDASHBOARD DOME(Walnut)を同時に販売開始

このウォールナットのモデル、実は検討を始めたのはPREDUCTSを立ち上げた頃。

3年以上の時を経て、ようやく世に出せたモデルなんです。今回はそんな背景を時間を遡りつつお話ししていこうと思います。

合理性はない。それでも作りたかった

2021年12月、PREDUCTSは『METRO』『FOREST』の2モデルからスタートしました。

METROはメラミンとウォールナット木口を組み合わせたもの、FORESTはラバーウッドの塗装仕上げのモデルです。冒頭でもお話しした通り、実はこの最初の2モデルを開発する段階から、私たちは「ウォールナットのデスクを作れないか?」と検討していました。

というのも、立ち上げ当初に“ダークトーンの木天板”をラインナップに入れようと考え、真っ先に想起された樹種がウォールナットだったからです。

ブランド立ち上げ時のnoteにもありましたが、代表の安藤が2012年に仲間と共に立ち上げたデザインスタジオTHE GUILDの最初のオフィスには、内装費の半分を使ったこだわりのデスクがありました。振り返るとこのデスクはウォールナットを使ったものでした。

THE GUILDの最初のオフィスのデスク。100万円の創業予算の内、50万円をこのデスクに注ぎ込んだ

また、PREDUCTSをはじめるきっかけにもなった「デスクをすっきりさせるマガジン」に熱中していた頃、愛用していたデスクもウォールナット天板のものでした。

それもあって、METROの小口にはウォールナットの突板を採用しました。ただ、「天板全てをウォールナットで作る」には大きなハードルがありました。

そもそも、ウォールナットは(比較的)高価な樹種。かつ、PREDUCTS DESKの特徴でもある裏面へのレール埋め込みといった加工への対応や、製造ボリュームの問題、世界的な木材価格の高騰などもあり、当初算出した製造原価では、とてもラインナップに組み込めるような価格に納めることができなかったのです。

そのため、さまざまな検討を経て、最終的にはラバーウッド材を塗装で仕上げた『FOREST』を開発。材質こそ異なるものの、塗装・表面仕上げにこだわり、確かな知覚品質を担保したモデルに仕上げていきました。加えてリリース後も幾度かのマイナーアップデートを重ねており、現在ではウォールナットにも劣らぬ質感を持つ製品であると自負しています。

それでも、私たちはウォールナットのデスクを諦められなかったんです。

正直、合理的な理由はありません。すでにFORESTというダークトーンの木天板はありますし、間違いなくウォールナットはそれより高価になってしまう。

ただ、もしウォールナットのデスクがあったらきっと心躍るプロダクトになるのだろうな……そんな漠然とした“想い”だけ。決してウォールナット家具を集めていたり、ウォールナット材で家を揃えているようなこともないのですが、「作りたい」という気持ちは変わらず持ち続けてきました。

3年以上続けてきた模索

とはいえ、正直その開発や検討は、決して優先度の高いものではありません。

PREDUCTS DESKはモジュール式デスクということもあり、モジュールの数など製品群が揃ってこそその真価を発揮します。しかし、立ち上げ当初はデスクもモジュールも数アイテムのみ。その拡充がなによりも急務でした。

それゆえ、この数年はデスク・モジュール両面の拡充に注力。ユーザーの方々がよりよいPREDUCTS体験をできることを目指してきました。

ウォールナットは、その視界の片隅にいつもいるような存在でした。優先順位は低く、マイルストーンとなる日付もないため、“きっかけ”がなければ動くこともありません。製造先や製造方法、製品仕様などさまざまな変数を時折組み替えながら、可能性を探り続ける月日が続きました。

試作部材の一部

その進捗は決して芳しくなく、一歩進んだと思えば振り出しに戻るような日々。そんな中、光明が見えたのが2023年の秋頃でした。ある変数を変えると諸条件が一気にかみ合う可能性が分かり、ラインナップに加えられる可能性が出てきたのです。

とはいえ、開発の優先度が高くないことは変わりません。他のモジュールやデスクの開発の合間を縫い、その後も検討を重ねていきました。

一歩先にお披露目できたのは、実は2024年5月に開催したポップアップイベント『WORK TYPES』で展示したDASHBOARDのプロトタイプ。24年12月に発売した「ATELIER」で採用したホワイトオーク材と一緒に、試作品を用意できました。

DASHBOARDの試作の一環で制作した、ウォールナット(手前)とホワイトオーク(奥)の天板

さらに、7月には京都大学白眉センターに所属する武田 紘樹先生の研究室にウォールナット天板にSteel Legを組み合わせたワンオフの試作品を納入。(※試作品は、幅180cmのワイドモデル)デスクサイズにすることでより多くの学びが得られました。

京都大学白眉センターに所属する武田 紘樹先生の研究室に納入した試作品。幅180cmの大型モデルで、専用のSteel Leg(鉄脚)も開発した

いずれも製品版とは仕様は異なるものの、設計や仕様、量産の課題などを検証する良い機会となりました。これを機にそれぞれ量産へ向けた最終調整を進行。ついにお届けできる形になったのが今回のDOMEなのです。

知覚品質、質感を最大限追求した

DOMEの特徴であり魅力は、何と言ってもその知覚品質——質感にあります。

深い色味や木目の美しさなどが高く評価され、世界三大銘木としても名を挙げられるウォールナット。DOMEには、その無垢集成材を採用しました。表層面だけでなく全てウォールナット材を使いながらも、木目や色味のばらつきによる印象のブレを最小限に抑えるべく、一枚板や横はぎではなく、集成材を選択。製品の歩留まりを高めるとともに、PREDUCTSとしてお届けしたい質感・雰囲気を再現性高く生み出してくれます。

表面には、その色味や木の質感を最大限活かせるよう薄いクリア層で仕上げを施しました。エッジには、他モデルでは採用していない非常に小さいアール(曲面)で仕上げることで、木の柔らかな質感を強調しています。

ここで、あえてFORESTと比較してみます。

FORESTは、ラバーウッドという木材を使いつつも、塗装仕上げによって製品に色味等のばらつきが非常に小さく、私たちの想定した色味を的確に表現してくれています。木の風合いが弱く映るかも知れませんが、“PREDUCTSの考えるダークブラウン”を最も的確に表せるのはこのFORESTです。加えて、仕上げを行っていることで経年による劣化が少ないのも使い続ける上では大切な点だと考えています。

一方のDOMEは、ウォールナットという材質の特徴により、同じデスクであっても製品ごとに表情の差があります。その分デスクに表情があり、ワイドモデルなど広い面積のモデルであってもウォールナットならではの表情と力強い印象があります。

左:DOME/右:FOREST

さらに樹種の特性もあり、その質感・知覚品質はとても優れています。

いずれもダークトーンのインテリアにはマッチし、家やオフィスを彩ってくれるプロダクトであることは間違いありません。

ただ、何を重視するか、自身のワークプレイスに求める要素や時間軸によって、適任となるものは変わってくると考えています。複数台を並べるオフィスのような環境であれば、安定して狙った印象を与えられるFORESTの方がよいかもしれない。書斎の主役として部屋を構築していくのであれば、質感が高く個性のあるDOMEの方がいいかもしれない。

私たち自身、このようにセットアップや利用シーンを想像するのが楽しくなるようなプロダクトに仕上がりました。

DOME、FORESTとも各々の世界観で

3年以上の月日を経て、やっとリリースにこぎ着けられたウォールナット。

実は発売するまでは「FORESTと被ってしまい選ばれないんじゃないか」という不安もあったのですが、発売以後の動きを見ていると、私たちの想像以上にウォールナットという樹種を好んで選んで頂ける方がおり安心しました。

同時に、「FORESTが選ばれなくなるんじゃないか」という心配もあったのですが、それも杞憂に終わり、双方とも各々の世界観を踏まえて選んで頂けるものになっているようです。

ウォールナットならではの質感に興味をお持ちであれば、是非選んでみてください。決して後悔はさせない仕上がりになっていると思います。

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