考え抜いた“逆張り”が、卓越した成果を生み出す — necco

2024-08-20INTERVIEW

PREDUCTSは「いい仕事」を生み出す道具のメーカーです。

「仕事」とは、単に“生活のために稼ぐこと”ではありません。時間が経つことを忘れてしまうくらい没頭し、 充実感を与えてくれること。世の中に新たな価値を生み出し、文化・社会を前進させること。達成感や自己実現をもたらし、 また人間と社会との繋がりを与えてくれること。私たちは、そんな仕事を“シゴト”と呼び、シゴトを軸に様々なインタビューを展開します。

本連載のテーマは「シゴト場」。個人/企業を問わずワークスペースはそこに人の思想が表現されます。そんなシゴト場へ足を運び、そこでの活動とシゴト場に対する想いを伺っていきます。

2016年に秋田で創業し、現在は東京と秋田の2拠点で展開するデザイン会社necco。

Webを中心とするデザイン会社としては新興ながら、近年注目される実績を次々と生み出すなど勢いを見せる。その背景には「他社がやらないことをやる」という逆張りの姿勢があるという。

かつ、この姿勢は仕事の向き合い方やチームの作り方、ワークスペースなどにも反映されているそうだ。そんなneccoの“シゴト場”観を紐解くべく、東京・中目黒にあるオフィスを訪れ、代表の阿部文人さんに話を伺った。

秋田発、東京で拡大した2つの理由

まず、neccoがどのような会社か教えてください。

企業の「根っこ」となるデザイン資産をつくるデザイン会社です。クライアントの根幹(=根っこ)を多角的に考えながら、価値のあるデザインを生み出すことを目指しています。

当社では、Webサイトや商品パッケージ、アプリなどの様々な制作を、社内で一気通貫で担っています。そのために、社内にはデザインやエンジニアリングはもちろん、3DCGやモーション、コンテンツ編集、撮影などを担えるメンバーも在籍。総合的なデザイン制作を実現しています。

最近は、GO株式会社の脱炭素サービス「GO GX」のサービス・メディアサイトの制作や、心の問題に取り組む企業「Awarefy」のブランドデザイン・コーポレートサイトを担当しました。

neccoは秋田で創業されたと伺いました。阿部さんはそちらのご出身でしょうか?

いえ、私は東京出身なのですが、生活環境の変化で秋田に移住していまして。そこで入社したデザイン会社の同僚だったデザイナーとエンジニアとの出会いを機に独立・起業したため、秋田が最初の本拠地になりました。

私自身は東京時代に2回全く別の業種で起業をしていて、neccoは3回目の起業になります。

necco CEO / Creative Director / Design Engineer 阿部文人さん

「東京ではじめる」という選択肢はなかったのでしょうか?

もちろん考えました。ただ秋田で仲間に出会ったこともありますし、「秋田発でもやれるぞ」と証明したいという気持ちもあったんです。デザイン業界で有名な会社は大体東京に集まっていますし、起業するために東京に出る人も少なくありません。であれば逆に秋田発で成果を出せればそれ自体も独自性になるのではないかとも思ったんです。

結果として、秋田の様々な企業からお取引や協業のお声がけをいただくこともありましたし、東京のクライアントとご一緒できる機会もどんどん増えていきました。そうした積み重ねができたので、3年目から東京へ進出。秋田オフィスに残るメンバーもいましたが、創業メンバーであるデザイナーと私は東京に軸足を置くことになりました。

東京拠点となり、どのような変化がありましたか?

二つ大きな変化がありました。一つ目は、とにかく刺激を受ける機会が増えたこと。東京であれば業界のトッププレイヤーがすぐ身近にいます。秋田にいた頃から存じ上げていましたが、直接交流できる機会が増えると、その実力や差分を肌身で感じられるようになる。「必ず追いつく」という思いを強く持つようになりました。

二つ目は、明確に拡大を目指すようになったこと。やはり秋田と東京では採用のしやすさが全く異なります。もちろん東京に来た当初は無名の会社だったので、その意味での苦労はありましたが、それでも秋田と比べれば全然異なる。東京に出てきて採用が進み、着実に規模は拡大。オフィスも東京に出てきてから3度移転しました。

あえて「他社がやらない」選択を

東京は機会が多い反面、埋もれる恐れもあると思います。その中でneccoが重視してきたことはありますか。

neccoは「同業がやらないこと」を徹底的にやり続けてきました。もちろんむやみに「他社がやらないから」と選択してきたのではなく、つい避けがちなことを積極的に選択したり、慣習的に行われている不条理を無視し、結果的に「やらないこと」を選択してきた形です。

例えば、当社は創業初期から「制作」と「発信」を並行して続けてきました。仕事が仕事を呼ぶ業界なので、発信は本来とても大事。ですが、どうしても初期のころはトッププレイヤーの方々と自分たちを比べて「これくらいの成果で発信してよいものか…」と悩みがちでした。ですがそうした気持ちを乗り越え、至らない点があることは理解しつつ実績をとにかく発信してきました。

加えて、多くのデザイン会社が裏側の苦労を見せない中で、自分たちは制作過程での学びやメンバーの成長なども自社ブログで定期的に発信してきました。そしてそのために、全社員に「発信は業務の一環」と伝え続け、時間外などの余剰時間でやるのではなく、リソースをしっかりと割き発信するように促してきました。

最近になってやっと実態が少しずつ追いつき、発信を積み重ねた成果が徐々に感じられるようになってきました。

やるべきことや本質的なことを考え選択し続けてきた結果、「逆張り」になってたのですね。

採用もそのひとつです。一般的に小規模なデザイン会社だと、実務経験のある即戦力や美大出身のような一定の技術的土台のある人を好みますが、neccoは「未経験も採用する」と決めました。代わりに大事にしているのは「人柄と熱量」。長く一緒に働ける協調性や相性の良さがあり、「がむしゃらにやりたい」「上を目指したい」という強い熱意や意欲を持っている人に来てほしいと考えたんです。

当初から方針としていた訳ではないのですが、振り返ると現在のメンバーの半数は、入社時にデザイン未経験か独学程度。その代わり人柄がよく、根性のある人たちばかり。その結果、採用したデザイナーは現状一人も退職しておらず、長期的に一緒に働けています。

長期目線で採用するというのも、ユニークかもしれません。

デザイン会社では、長時間労働や長期間の下積みなど厳しい労働環境が少なくありません。それゆえに、道半ばでキャリアを諦める人を多く見てきました。でも、できることならそういう人が一人でも減って、デザインを続けてほしい。そのためにも、採用や発信、働き方などこれまでの“当たり前”に従わずに選択を続けたいなと思ってきました。

おのずと足が向くワークスペースを追求

そうした思いは、ワークスペースにも反映されていますか?

そうですね。neccoは秋田と東京に拠点があるため、フルリモートが前提です。ただ、だからといって「オフィスは不要」とは全く思っていません。場を共有する価値は間違いなく存在すると考えているので、メンバーが自宅とオフィスを比較した際に「オフィスの方がいい」と自然と感じられるよう、オフィス環境を整え続けてきました。

秋田時代を含めると過去4回移転していますが、オフィススペースにはキッチンを必ず用意するようにしてきました。コミュニケーションが生まれやすい環境づくりのために、メンバーと一緒に料理をしたり、食事をしたりする機会も多いです。今だから言えますが実はコロナ期間中も出社しているメンバーの方が多かったくらい。選択肢は提示しつつも自然とオフィスに集まるようになっています。

具体的には、どのように整えられているのでしょうか?

オフィスには一人一台デスクを用意し、ツールもかなり吟味したものを選び設置しています。ディスプレイはマルチタスクに適した広い表示領域を持つウルトラワイドをはじめとした大型のものを設置。

入力機器には、無線充電できるマウス、キーボード、トラックパッドを並べています。右手でマウス、左手でトラックパッドを操作できるように考えた配置です。長時間座る椅子も機能性と操作性のあるエルゴヒューマンのものを採用。将来的には、アーロンチェアなどよりハイエンドなものにすべて入れ替えたいと考えています。

メンバーのデスクのひとつ。最近導入されたもののため、PREDUCTS DESK - METRO/Standingとアーロンチェアを組み合わせている

一つ一つのアイテムが、こだわって選ばれているのですね。

はい、私が試して良かったらメンバー全員へ導入する…というような流れで少しずつ拡充してきました。私のデスクがテスト環境のようなイメージですね。もちろん、導入しても「使わない」選択をしてもらっても全然良いのですが、ありがたいことに導入したツールはほとんど使ってくれていますね。

阿部さんのデスク。モジュールを活用し、多種多様なガジェットの試行錯誤がなされている

PREDUCTSのデスクも複数台導入いただいています。こちらも阿部さんに評価いただけたのですね。

発売時から関心を寄せていました。とくに天板裏でケーブルをきれいにまとめられるというのが個人的にはとても魅力的でしたね。長年、配線を整えるのに苦労していたので、メンテナンスなどの観点から考えてもこれはいいと思い導入しました。

現在は3台ですが、こちらも徐々に台数を増やしていきたいと考えています。

広げることが、結果的に深めることへ

最後に、今後の会社の展望をお聞かせください。

クライアントにとって、良き伴走者になりたいです。Webサイトやロゴの制作だけではなく、イラスト、文章、写真、映像、音など……多種多様なデザイン・クリエイティブを一手に引き受けられる会社を目指したいですね。

一般的にはデザイン会社では一社で多様なスキルセットを持つより、コアな価値を定め各領域のプロフェッショナルと協業する方が多いかと思います。ただそれに関しても自分たちとしては逆に捉えていて。

社内に多様な専門性を持ったメンバーがいることで、お互いの仕事を間近で見ることができ、相互に影響を与えたり、刺激し合えたりする。その結果、自分の専門性を再認識したり、掛け合わせで強みが生まれたりして、より質の高いアウトプットができるようになるのではと考えています。

組織の作り方、専門性という意味でも逆張りで深めていかれるんですね。ワークスペースに関してはいかがですか?

今のオフィスは徐々に拡充してきた背景もあって、人によってツールや家具が違ったりする。まずはそれを揃えて、統一感のある空間をつくりあげたいなと考えています。他方で、このオフィスもすでにほぼ一杯なので、移転も考えなければとも思っています。移転した際には一気に環境を整えやすいですしね。

ただ、移転するにしても、メンバーが出社したくなり、コミュニケーションが生まれるような空間を追求することは変わりません。よりその精度を高めていきたいと思います。

ありがとうございました。

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