“柔らかさ”を大切に、まずは自分たちが楽しむ — 税理士・榮前田 慶太

2024-07-24INTERVIEW

PREDUCTSは「いい仕事」を生み出す道具のメーカーです。

「仕事」とは、単に“生活のために稼ぐこと”ではありません。時間が経つことを忘れてしまうくらい没頭し、 充実感を与えてくれること。世の中に新たな価値を生み出し、文化・社会を前進させること。達成感や自己実現をもたらし、 また人間と社会との繋がりを与えてくれること。

本連載では、そんな仕事を“シゴト”と呼び、“シゴト観”とその背景を紐解いていきます。

神奈川県藤沢市江の島。

湘南のシンボルとして知られるこの島に、その事務所はありました。

島の入口から江島神社までの参道へと続く商店街・弁財天仲見世通りの中ほど。

立ち並ぶ趣のある建物群の一角に、今回お話しを伺った榮前田 慶太(えいまえだ・けいた)さんが代表を務める「湘南クラウド会計事務所」はあります。

榮前田さんがこの場所に事務所を構えたのは2022年のこと。

「何でも相談できる存在でありたい」

「お堅い印象の仕事だからこそ、柔らかくありたい」

そうした想いが、この地に榮前田さんを呼び寄せたといいます。

PREDUCTSのリリース当初からのユーザーでもある同氏に、大切にする“シゴト観”について話を伺いました。

“数字”は大事。でもそれだけに終始しない

はじめに、榮前田さんのお仕事を簡単に教えてください。

税理士として、主に中小企業向けにお金に関する部分のさまざまな支援を行っています。具体的には顧問先の税金の計算、税金に関する相談対応、申告書の作成、経理体制の構築、クラウド会計ソフトの導入・活用サポートなどが支援内容になります。

得意としているのは、「〇〇をしたいけれど、何から進めるべきかわからない」といった課題に対して、中長期的にサポートしていくこと。

まず会社の“数字”がどういう状況にあるのか、ある程度つかめる状態をつくるための仕組みや体制を整えていく。そうして土台が整備されたら、来期、数年後と徐々に未来について話し合い、計画に落とし込んでいきます。特にそうした将来の計画づくりと実行に力を入れているところは、特徴的かもしれません。

単に会計や税務だけではなく、経営者を数字という切り口から後押しするようなイメージでしょうか。

そうですね。僕は経営者を「しっかり支えられる存在」になりたいと思ってこの業界に入りました。言葉にすると当たり前のように思えますが、支援を重ねるごとに「やっぱりこの姿勢が大事だ」と確信を深めています。

経営者は、何が正解かわからない中で進んでいるので、当然さまざまな不安を抱えている。それは成果が出ていたとしても同様で、どこかで「これでいいのか」「もっとできんじゃないか」と、悩んでいたりする。そうした不安や心配を受け止め、数字を根拠にしながら「大丈夫」と伝え、背中を押せる存在でありたいと思っています。

榮前田 慶太|湘南クラウド会計事務所 代表/税理士・中小企業診断士

そのために、特に大切にされていることはありますか?

ひとつは、数字は大事にしつつ、数字だけに終始しないこと。

特に計画を立てる際などには、できる限り顧問先の方が想像を膨らませやすくなるよう意識して、会話やコミュニケーションをしています。

もちろん、数字はとても大事なものです。でも数字だけと向き合っていると、どうしても未来の話が小さくまとまったり、視野が狭くなったりしてしまうことがある。顧問先の方が描く未来のスケールが必要以上に小さくなりすぎないようにするのも、数字を扱う我々だからこそできる支援のあり方だと考えています。

もうひとつは、できる限り柔らかくあること。

“税理士”と聞くと、なんとなく堅くとっつきづらい印象をもたれる方も少なくありません。だからこそ、雰囲気づくりは大切だと感じています。話しやすい雰囲気が、経営者の方が心を開き不安や悩みを伝えやすくする一助になると思うからです。

そのために、僕自身もスーツに革靴といった“いわゆる”な格好ではなく、Tシャツ短パンとラフにしていますし、このオフィスもいわゆる“会計事務所”とは異なる印象の空間・場所にしているんです。

経営者の方と向き合うためにも、雰囲気や空間を大切にされているんですね。

半分は「自分の好き」を反映してやってる部分もあるんですけどね(笑)。ただそうした「自分がいいと思う状態」に身を置くのも、それはそれで大事だとも思っていて。僕たち自身が楽しんでいられることが、結果的に顧問先の方にも面白いと思える選択をしてもらうことにつながると考えるからです。

「疲れていそう」「つまらなそう」な人に対して、自分がワクワクしてる話ってしづらいじゃないですか。逆説的に言えば、こっちが楽しそうにしていたら、顧問先の方の楽しい気持ちを引き出すことにつながるかもしれない。

だからまず僕らがワクワクしながら話を聞けること。その上で、専門家としてサポートしながら、一緒になって物事を進めていく。そういうスタンスで仕事をしたいと思っています。

実際この仕事をしていて「楽しいな」と感じるのはやっぱり、顧問先の方が面白そうな取り組みをしているところに関わっていく場面なので。そのためにも僕たち自身がまず楽しめている状態を作りたいですね。

「経営者の力に」という想い

榮前田さんは、なぜ税理士の仕事を選ばれたのでしょうか。

僕が税理士を志したのは社会人になってから。きっかけは求人広告の営業を経験したことでした。

営業するなかで、中小企業の社長の方と話をする機会がたくさんあって。続けていくうちに、色々な個性を持った社長たちと話すこと自体に、面白さを感じるようになっていったんです。

たくさん話をしていると、社長一人ひとりがさまざまな悩みを抱えていることに気付かされます。けれど、当時の自分にできるのは採用面からの支援のみ。それが歯がゆいというか、「もっとこの人たちのためにできることがあるんじゃないか」と思うようになったんです。

そうして次の道を考え始めた時、専門的な知識を身につけてお金に直結する部分を支援したいと思い、税理士を目指しはじめました。

経営者の力になりたいという想いから、税理士という仕事だったんですね。

幸運だったのは、税理士になって最初に入った事務所のスタンスが自分の考えと非常にマッチしていたことでした。申告や税金といったいわゆるお金の話だけにとどまらず、より広く顧問先を支援することを大事にする事務所だったんです。

支援内容もかっちり決まってるような事務所も少なくない中で、それとは真逆の自由過ぎるくらいな環境でした。今までのやり方を単に踏襲するのではなく、自分のなかでしっくり来なかったり顧問先の方にとってプラスにならないと感じたものはその都度変えていくようにしていました。

すでに入っている会計システムを入れ替えたり、顧問先と何をできたら良いかを議論して支援内容をつくってみたり。ちゃんと目的や意図があれば、上司からも文句は言われない環境だったので、かなり好き勝手にやらせてもらっていたと感じます。その時に場数を踏めたことはいまのスタイルに確実に活きていますね。

顧問先が日常から距離を置ける場に

事務所についても、お話を聞かせてください。この物件を選ばれたのはどのような経緯からだったのでしょうか。

独立当初から江の島の最寄りである片瀬江ノ島駅前に事務所を構えていて。移転先を探す際もこの近辺の海沿いを探していました。その中で住居として出ていたこの物件に興味を持ったんです。ご覧の通り非常にユニークで、建物は増改築を重ねた古い日本家屋ですし、立地も弁財天仲見世通り沿い。またとないような物件でした。

ただ住居として使うには少し広すぎるのもあり、なかなか借り手が見つからなかったようで。相談してみたところ事務所利用もOKをいただけたので、ここに事務所を構えることになりました。

エイマエダさんの大事にする価値観と、どのような点で共鳴する部分があったのでしょうか?

まずは立地ですね。駅から歩いて江の島大橋を渡り、観光客がいる通りをのぼってこの建物に入る——“日常”から距離を取るにはちょうどいい立地だと思うんです。普段の業務とは異なる目線で経営や企業について考えるスイッチを入れるには、ちょうどいいと感じています。

あとは、空間。先述のとおり会計事務所らしくない建物ですし、家具をはじめとするものの選定もなるべくカチッとした印象にならないようにまとめました。

執務スペースには4台もPREDUCTS DESKを導入いただいています。これはどのような理由からだったのでしょうか?

もともとは自分でDIYしたデスクを打ち合わせ用と作業用とで兼ねていたのですが、PREDUCTS DESKを見つけて、サイズ感やモジュール式の仕組みを気に入って導入を決めました。

会計事務所というと、どうしても昔ながらの事務机を使っていたり、デスク同士の幅が狭くてて隣りとの距離が少し近かったりと、事務作業の環境としては正直快適とは言えないところが多い。

かつ、現代の会計事務所は書類よりもPCの画面を見ている時間の方がずっと長いので、それに最適化したワークスペースの構築は生産性の観点でも大事になってくる。そう思い、PREDUCTS DESKを中心に大型ディスプレイやモニターアーム、ワークチェア、入力機器類などを揃えてきました。メンバーが増えるごとに、台数を増やしてきたところいまでは4台並んでいるような形です。

僕が使っているのが一番古い鉄脚(Steel Straight)のモデルで、ほかの3台は電動昇降脚のモデルなので昇降できるのがうらやましいなと思いながら見ています(笑)。

もっと多様なアプローチで経営者を支援できるように

2020年に創業されて5年目、事務所としては当初思い描いていた姿に近づいていますか?

顧問先との関係性は、少しずつ良くなってきた実感があります。数字がベースにあったうえで、数字以外の部分にも視野を広げながら、顧問先の社長の頭の中にあるイメージを共有してもらう。そのうえで、計画に落とし込む段階でまた数字に戻っていく。そうして目標や計画を具体化し、前へ進むための力添えできているのではないかと思います。今後はそれをより体系化し、自分たち以外の会計事務所に一つのノウハウとして共有できるようにしたい。最近はそういう妄想をし始めています。

自分たちだけにとどめておくのではなく、広げていきたい?

僕の仕事として支援できる数には限りがあります。だからこそ、世の会計事務所のなかで、自分たちと同じようなかたちで支援したいという方がいたら、積極的に共有していきたい。そうすれば、お堅いイメージ通りではなく、もっとさまざまな角度から経営者を支援できる税理士や会計事務所が増えるんじゃないかと思うからです。

もちろん、自分たち自身もまだまだ良いやり方があると思っています。既存の範囲にとらわれず今の顧問先にはもっと、大きな価値を提供していきたい。まだ開業して5年目ですから、事務所としてもっと色々な価値の出し方をできるよう挑戦していきたいです。

ありがとうございました。

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