PREDUCTSは「いい仕事」を生み出す道具のメーカーです。
これは私たちブランドの目指す姿でありつつ、自分たち自身が、道具に求めていることでもあります。日々使う道具も”使いやすく”、”創造性を刺激してくれる” ものであってほしい。そんな道具を探しながら、ものづくりに勤しんでいます。
このシリーズでは、PREDUCTSのメンバーが普段愛用している道具たちをご紹介していきます。
こんにちは。PREDUCTSの宮澤です。
普段PREDUCTSでは2Dグラフィックやイラスト・簡易的な図面の他、ウェブのデザイン(から実装)などの作業を行なっています。主にAdobe Illustrator や Photoshop、Figma、などを扱い、たまにFusion360、Blenderなどの3D系を使うこともあります。
前回のJOURNAL ではポインティングデバイスのキーボードとマウスについて書きましたが、その中でも私のようなグラフィック系の作業で重要になるアイテムがマウスです。
さよならG604
私が愛用しているのは Logicool G604 というマウス。カスタマイズできるボタンが13個もありながら、ボディが大き過ぎない素晴らしいものです。
ただ唯一残念なのが、ボタンのチャタリング(1回クリックしたのに2回以上クリック信号が送られてしまう)が発生しやすい?(私が酷使しすぎているという噂も)機種であること。修理交換や買い換えたものを含め現在使っているものはすでに4代目です。そんな不具合があっても私にとってG604は手放せないもの。なので買い換えては使い続けてきたのですが、残念ながら生産終了になってしまいました。
そんなこんなでG604ロスの私は、代わりとなるマウスを探す旅に出なければなりません。本記事ではその道筋を……と思ったのですがその前に、私のマウス選びの基準となる「こだわり」と「カスタマイズ」の詳細をご紹介させてください。
私がマウスを愛用し続ける理由
イラストを描く作業なら紙とペンのように感覚的に扱えるタッチスクリーンや液晶タブレットなどが適しているでしょうし、狭い範囲での細かな作業にはトラックボール、3DCGなら3Dマウス、といった具合に、さまざまなポインティングデバイスにはそれぞれの得意分野があります。
私のように、細かな操作が必要なグラフィックや図面・イラストを作成し、大きな範囲でレイアウトを行う場合、マウスというデバイスがとてもマッチしていると感じています。
まず、マウスの良いところは、ボタンアクションとポインター(カーソル)の移動が分離されている点です。
例えばトラックボールの場合、ボタン操作とポインターの移動を全て指先で行います。トラックパッドも同様で、ポインターを動かす指先の負担が大きいことがとても気になります。
一方マウスは、ボタンを押す操作は指先で、ポインターの移動は手首や指の関節が担います。ボタンとポインターの操作を同時に行う際、指先への負荷が少ないところが魅力といえます。
また、少しの移動距離で精度の高いポインター操作を行えるというメリットもあります。
タッチスクリーンや液晶タブレットは感覚的に扱えるメリットがありますが、手を動かす距離が多くなってしまうのが難点です。また、作業中に手でスクリーンの一部を隠してしまうため全体を俯瞰しながらの作業には向いていないように感じています。
私は細かな作業をする際、マウスを掴む小指や薬指を滑り止めとしてデスクに触れたままにして動きをコントロールし、大きな動きをする場合はストッパーとなる指を浮かせてスムーズに移動させています。
少ない動作で細かなポインター操作をしながら、複数のボタンを複数の指で押し分けられるマウスは、グラフィックデザイン系の作業に向いているデバイスだと思っています。
さらに、各ボタンに好きな機能を割り当てれば様々な操作が片手で行えるようになり、私のような作業効率にこだわりをもつ人にはより相性がよいと感じています。
マウス選びのポイント
そうしたこだわりのもとでマウスを選ぶ場合、何が重要になるのか。私が気にしているポイントをいくつか挙げてみます。
マウスの大きさ
手首をデスクに固定して、つかみ持ちやつまみ持ち(マウスの左右を親指と薬指・小指で挟み、マウス後方が手のひらに触れるか触れないか程度の持ち方)の状態で指の屈伸だけで動かせるサイズが好みです。
有線と無線
有線のマウスはケーブルがポインター操作の邪魔になるため、無線接続が必須です。受信機がついた2.4GHz無線接続の場合、USB端子がUSB-Cでなかったり、他の電波に干渉する恐れがあるためできればBluetooth対応のものがよいです。
バッテリー内蔵式と乾電池式
バッテリー内蔵のものは、マウス側のUSB端子の形状によっては充電が面倒な場合があります。マウスの奥まった部分に端子があり、付属のケーブルでないと接続できないこともあります。また、充電中に操作ができないマウスもあるようなので気をつけましょう。切れたら交換するだけで済む乾電池対応のものが安心です。
マウス側で決め打ちされたボタン機能
戻るボタンや閉じるボタン等、マウス側で機能が固定されてるマウスはカスタマイズできない場合があるので気をつけたいです。ユーティリティソフトが付属・対応していないマウスはカスタマイズできない恐れがあります(後述)。
スクロールホイールの回転
スクロールホイールには回転する際、カリカリとクリック感のある「ラチェット」タイプと、抵抗がすくなくスルーっと回る「フリースピン」タイプがあります。Webブラウザやドキュメントなどをサクサクとスクロールしたい場合はフリースピンタイプが便利ですが、マウスをカスタマイズするのであれば、1カリで1アクションを発動させられるラチェットタイプがおすすめです。
スクロールホイールの左右チルト
個人的に必須機能です。これだけで2つぶんのボタン機能が追加できます。ホイールを横に倒す操作は直感的で、左方向と右方向に関する機能を割り当てたいところです。
ボタン数
ボタン数は多ければ多いほど良いです。もしボタン数が少なかったとしても、ユーティリティソフト次第で擬似的に操作を増やすことは可能です。
…と、ここまででも、かなりの数になってしまいましたが、こうしたハードウェアの要件の多くは次項のカスタマイズ内容を読むとその必然性がおわかり頂けるかと思います。
ボタンのカスタマイズ
さて、これだけあるこだわりがなぜ必要なのか。それは細やかなマウスのカスタマイズにより作業効率を上げるためにあります。
ボタンのカスタマイズは、マウスに付属するドライバーソフトやサードパーティ製のユーティリティソフトで行います。ソフトやマウスによってはできることできないことがありますのであらかじめご了承ください。
細かい話ですが、マウスボタンからパソコンへ送る操作信号にはいくつか種類があるようです。
- マウスボタンの汎用的な信号を送るマウス
- マウス内のメモリに送る信号を保存するマウス
- 決まったキー信号を送るマウス
1 と 2 はドライバーソフトが付属しており、特に1はサードパーティ製のユーティリティソフトでもカスタマイズできます。
2 は付属のドライバーソフトのみでのカスタマイズになり、OSによっては使えない場合があります。サードパーティ製のユーティリティソフトでカスタマイズしたい場合は、対応したOSに接続し一度付属ドライバーソフトでキーを割り当てなければなりません。
3 はカスタマイズが難しいので避けた方が良さそうです。
私はMacユーザーなので、macOS環境でのカスタマイズ例をご紹介します。
私が使用しているのは ステアーマウスというプレンティコム・システムズが開発されているユーティリティソフト。カスタマイズ方法が豊富なうえ動作も非常に安定しています。
カスタマイズの可能性
ステアーマウスでの説明になってしまいますが、マウスをカスタマイズできる主な機能は以下になります。
- ボタンにショートカットキーや特殊なアクションを割り当てられる
- ふたつのボタンを組み合わせた操作にショートカットキーや特殊なアクションを割り当てられる
- スクロールホイール回転時にショートカットキーや特殊なアクションを割り当てられる
- キーボードの修飾キー(command, shift, option, control)との組み合わせることでさらにショートカットキーや特殊なアクションを割り当てられる
- スクロールホイール回転時のスクロール加速度やスクロール距離を調整できる
- カーソルの加速度や感度を調整できる
- アプリケーションごとに設定を変えられる
- マウスごとに設定を変えられる
中でも「組み合わせ機能」がすばらしい。例えば「右クリックを押しながらスクロールホイールを回転」といった操作にショートカットキーを割り当てられるのです。
さらに、キーボードの修飾キーを組み合わせれば、ボタン数が少ないマウスでも様々な操作が行えるようになります。このような具合に…。
宮澤的マウスのカスタマイズ設定
参考までに、私が設定している内容の一部を紹介します。
デフォルト設定
- enterキー
- deleteキー
- カーソルキー(←、↑、→、↓)
- ファイルブラウザを表示&切替ウインドウを表示
- スクロールホイールの左右チルトでタブ切り替え
右手がマウスとキーボードを往復する機会を減らすため、キーボードの右側にあるよく使うキー(enter、delete、←、↑、→、↓)をマウスに割り当てます。
また、ファイルブラウザを最前面に表示するボタンを用意しておくとファイルへのアクセスが容易になります。ファイルブラウザ側には「切替ウインドウを表示」を設定しておけば、マウスのボタンひとつだけでアプリケーションを行き来できます。
さらに、スクロールホイールの左右チルトにはアプリケーション内のタブを切り替えるショートカットキーを割り当てています。アプリケーションによってショートカットキーが違う場合もあるので、その場合は特定のアプリケーションごとにショートカットキーを上書きします。
左右チルトでタブを切り替えられるようにすると本当に快適になります。クリックでタブを切り替えることはほぼなくなりました。
ウェブブラウザ設定
- リンクを新規タブで開く
- 戻る
- デベロッパーツールを表示
- スクロールホイールの左右チルトでタブ切り替え
デフォルトの設定以外に、リンクを新規タブで開くボタンを用意しています。
macOSの場合、ほとんどのウェブブラウザはcommand+クリックで新規タブで開くので、デフォルト設定で利用していない押しやすい位置のボタンに割り当てると非常に便利です。
また、commandキーを押しながらマウスのdeleteボタンを押して前のページに戻れるようにしています。修飾キーとマウスボタンを組み合わせられるところも魅力です。
マウスのボタンでデベロッパーツールを表示するのも便利です。
デフォルトで設定した、スクロールホイールの左右チルトでタブ切り替えも必須です。
Adobe Illustrator設定
私にとって一番使用頻度の高いアプリケーションです。好き勝手にカスタマイズしすぎてるので、便利そうな設定の一部だけご紹介します。
- 右クリック+スクロールホイール回転でフォントサイズを増減
- command+右クリック+スクロールホイール回転で線幅の増減(スクリプトを併用)
- shift+右クリック+スクロールホイール回転でオブジェクトの重ね順を前面・背面へ
- スクロールホイールの左右チルトで前後のオブジェクトを選択
機能の多いアプリケーションは「組み合わせ機能」が活躍します。
特に何かを増減させるような操作は、スクロールホイールの回転との相性がよいです。また前後や左右に関する切り替えはスクロールホイールの左右チルトで行うようにしています。
その他、Adobe PhotoshopやFigmaなどのグラフィックソフトやBlenderやFusion 360といった3DCGソフト、その他ビューワーやテキストエディタなどにも、よく使う機能をその都度マウスに割り当てています。
私が求めているマウス
だいぶ横道にそれてしまいましたが、以上のようなこだわりとカスタマイズに対応できるマウスを探し続けた結果出会ったのが、先にも書いた G604 でした。
10個の独立したボタンとスクロールホイール(スクロール、クリック、左右チルト)を備えていて、掴み持ちができるサイズ感、単三電池で動き、Bluetoothに対応した素晴らしいマウス。後継機種も出ずに生産終了とか悲しすぎます。
G604の代替となるマウスは無いものか…。
ということで、今後気になるマウスを試してレビューしていこうかと思っています。